2017年度 入学式式辞
新入生の皆さん、広島学院中学校入学おめでとう。
君たちは、先ほど担任の先生から一人一人名前を呼ばれ、しっかりと返事をして、広島学院のメンバーに仲間入りしました。私たち教職員と在校生は、君たちを心から歓迎します。
君たちは、今日の日を迎えるために精一杯努力をしてきたことと思います。今、その努力が報われた喜びを感じていることでしょう。中学校の生活とはどんなものだろうと、わくわくしている人もいるでしょう。初めての環境に多少の不安を感じている人もいるかもしれませんが、それでもみんな今日から広島学院の生徒として一生懸命に勉強をしよう、クラブ活動にも励もう、新しい友達とも楽しくやっていこうという気持ちになってくれていると思います。そういう今の気持ちを忘れないでください。と同時に、これまで君たちの努力を支えてくださったご家族や先生方、友達への感謝の気持ちも、忘れないでください。
君たちは、広島学院の62期生として、この学校で6年間様々なことを学びます。「学ぶ」とは、単に知識や技術を詰め込んで学力を高めることをいうのではありません。より良く生きるために必要な力を身につけようとすることが、学ぶということです。授業はもちろん、クラブ活動や他の活動、学校行事、そして友だちや先生と過ごすひと時も含めて、学校での生活のすべてが学びの場です。学びたいと思えば、いくらでも学ぶことはあります。ですから、ただ先生に言われたことだけをして満足するのではなく、もっと色々なことを知りたい、もっと色々なことを体験してみたいという気持ちで、自分から進んで様々なことに取り組んでもらいたい。積極的に挑戦しようという姿勢が、学校生活をより楽しいものにしてくれます。
もちろん誰でも悩むことや疲れることがあります。怠けたくなることもあるでしょう。楽しいことだけでなく、悩んであれこれ考えたり、疲れを癒したり、怠けたい自分と戦うことも、君たちにとって学びです。こういったあらゆる学びを通して、君たちは頭も心も大きく成長してくれるものと、私は期待をしています。
ところで、入学許可宣言に先立って聖書が朗読されました。イエス・キリストの活動や教えについて書かれた福音書という書物の一節です。
この朗読された箇所の背景を簡単に説明すると、イエスには、活動を共にする12人の弟子がいました。そのうちの2人がイエスに「あなたが王様の位についたとき、私たちをその次に高い地位につけてください」とお願いをしました。名誉や権力がほしかったのでしょう。他の10人の弟子は、この2人が自分たちを差し置いて、イエスに高い地位につけてほしいと頼んだことに腹を立てました。彼らもまた、2人と同じように、名誉や権力がほしかったのかもしれません。
そんな弟子たちの様子を見てイエスがみんなを呼び寄せて語った言葉が、朗読された言葉です。「偉くなりたい者は皆に仕える者になりなさい。私自身が、仕えられるためではなく仕えるために来たのと同じように」と。
私たちの社会には秩序を保つために、地位や立場の違い、役割の区別といったものがあります。そんな社会で、自分は偉い人になりたい、高い地位につきたいと考えるのは、決して悪いことではありません。ですが、高い地位について人を支配したり権力を振るったりするのが偉い人なのではない。どんな役割であっても、皆に仕える者が偉い人だとこの聖書の言葉は教えています。仕えるという言葉は仕事の「仕」という字を書いて、一般には目上の人のために一生懸命に働くことをいいますが、ここでは、地位や立場に関係なくその人のために何が必要かをよく考えて、誠意を持って働くことをいいます。
君たちはみんな、この学校の入学試験で十分な成績を修めるだけの高い学力を持っています。その学力をさらに伸ばし、自分の可能性を広げ、将来、必要とされるところでリーダーとして、持てる能力を惜しみなく発揮することを期待されています。
ただしそのリーダーとは、周りの人に「私のために働くように」と要求するリーダーではありません。人に仕えられるリーダーではなく、人に仕えるリーダーです。そのようなリーダーになるために君たちには、たくさんの知識や技術を身につけ、じっくりと考える力を養うとともに、人を思い遣る心、少々のことではくじけない心、真実を正しく見ることのできる心を育ててもらいたい。人に仕えるリーダーとして、他者のために、特に立場の弱い人のために持てる能力を発揮できるように、この学校でたくさんのことを積極的に学んでもらいたいと思っています。
最後になりましたが、保護者の皆様、ご子息のご入学おめでとうございます。生徒にも話しました通り、広島学院は創立以来、他者に仕えるよきリーダーの育成を教育目標にしています。ご子息にはこれからの6年間、持てる能力をより高め、豊かな心を育み、調和のとれた人格を形成して、将来それぞれが進む道で立派に活躍するための土台を作ってもらいたいと思っています。
そのために、教職員一同、日々努力をしてまいりますので、保護者の皆様におかれましても、私どもの教育にご理解を賜りご協力くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
新入生とご家族の皆様の上に神様の豊かな祝福がありますよう祈りつつ、私の式辞とさせていただきます。