1月16日 朝礼
おはようございます。
今日は木曜日なので、中高別朝礼で週番の先生がお話しされるのを期待していた生徒が多いかもしれませんが、月曜授業の日ということで全校朝礼にしました。
高3の生徒は、いよいよ明後日からセンター試験です。私としては健闘を祈ることしかできませんが、何とか平常心で臨み、持てる力を存分に発揮してもらいたいと心から願っています。今日、明日と、健康管理に気を付けながら、適度の緊張感をもって最後の準備に励んでください。
そして来週の火曜日は、本校の中学入試です。今年の志願者数は648名で、昨年とほとんど変わりません。卒業生やここにいる生徒のみんながそれなりの評価を受けているので、毎年これだけの受験生が集まってくれるのでしょう。前日の月曜日は午前中授業で、午後は準備作業があります。受験生たちのために、しっかりと協力してください。
さて、廊下には「Age Quod Agis」(アジェ クォド アジス)というラテン語の言葉を掲げてもらっています。Magis などと同様にイエズス会学校が大切にしているキーワードの1つで、「するべきことを、するべきときに、勇気をもって実行する」という意味です。「自分で論理的に考えて判断し、それに従ってしっかりと行動することを心掛けよ」という教えです。
このAge Quod Agisの生き方を貫いた人の一人が、昨年12月にアフガニスタンで銃撃されて亡くなった医師の中村哲さんだろうと思います。中村さんの活動についてはメディアで詳しく取り上げられたので、みんなも知っているかと思います。35年前、中村さん38歳のとき、最初はパキスタンの北部のペシャワールに渡り、主にハンセン病患者の治療に当たりました。その2年後、パキスタンの政治情勢が悪くなったために隣国のアフガニスタンに移り、アフガニスタンやパキスタンからの難民の医療活動や、医療過疎地での診療所開設に従事しました。
当時、アフガニスタンは、長引く紛争の影響で国土は荒れ、難民は増え続け、衛生状態は極めて悪く、赤痢やコレラが発生し、住民の健康状態は悪化を辿っていました。中村さんは、医療活動だけでは限界を感じ、きれいな水を確保するためにいくつもの井戸を掘り、地下水路の修復も始めました。それによって、実際に赤痢やコレラなどの感染症は激減したそうです。
ところがその後、アフガニスタンを襲った大干ばつにより、地下水も枯渇し始めました。中村さんは「とにかく食べられるようにしなければならない」ということで、大きな川から水を引いてきて灌漑用水路を建設し、荒れ地を開墾して農地を作ることにしました。現地の人とともに、手作業で地道に土木作業を進めた結果、今では砂漠のようだった土地約165㎢が、肥沃な土地に甦りました。そこで農業が始まり、教育機関なども設置し、推定15万人もの難民が、この地域に定着できたそうです。貧困のため武装勢力の傭兵にならざるを得なかった人たちも、銃を捨てて戻って来ることができたとのことです。
このように、中村哲さんは医師として現地に赴きましたが、貧困に苦しむ人々の暮らしそのものを考えて、農業支援を始めました。水源を確保し農地を回復すれば、生活が安定し健康を取り戻せるということで、農業支援は、中村さんにとって医療行為の延長でした。武装勢力が割拠する危険地帯でしたが、治安の安定のためにも農業復興は急務であるとして、活動を続けました。今なおアフガニスタンの各地で紛争や干ばつの影響が深刻な中、中村さんはあと20年は活動したいと仰っていた矢先に、今回の襲撃事件は起こったそうです。
中村哲さんの生き方は、「するべきことを、するべきときに、勇気をもって実行する」というAge Quod Agisそのものだったと思います。ただ、このように中村さんを、Age Quod Agisのモデルとして紹介すると、私たちにとってAge Quod Agisは大変ハードルが高いものになってしまうかもしれません。
それでも私たちは、中村さんが実践されたAge Quod Agisの生き方をよく知っておかなければならない。と同時に、私たちにとってのAge Quod Agisは、もっと身近なところにもたくさんあるということも、知っておかなければなりません。たとえばきちんと挨拶をするとか、落ちているごみを見つけたら拾ってごみ箱に捨てるとか、バスや電車内で困っている人に席を譲るなど、するべきことと分かっていても躊躇したくなることがあったとしても、そこでちょっとした勇気を持って行動に移す、これがAge Quod Agisです。怠けたい心に打ち克って日々の課題をきちんと果たすのも、Age Quod Agisです。
しばらくこの言葉を掲げておきたいと思います。