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講話

2020年度 入学式式辞

新入生の皆さん、広島学院中学校入学おめでとう。
 君たちは、先ほど担任の先生から一人ひとり名前を呼ばれ、しっかりと返事をして、広島学院のメンバーに仲間入りしました。65期生として今日からこの学校で学ぶことになった君たちを、私たち教職員、そして今日はここにはいませんが、在校生は心から歓迎いたします。
 君たちは、今日の日を迎えるために、精一杯努力をしてきたことと思います。今、その努力が報われた喜びを感じながら、新しく始まる中学校の生活にわくわくしているのではないでしょうか。中には、初めての環境に多少の不安を感じている人もいるかもしれませんが、それでもみんな今日から広島学院の生徒として一生懸命に勉強をしよう、クラブ活動にも励もう、新しい友達とも楽しくやっていこうという気持ちになってくれていると思います。
 そういう今の気持ちを忘れないでください。と同時に、これまで君たちの努力を支えてくださったご家族や先生方、友達への感謝の気持ちも忘れないでください。

 さて、入学許可宣言に先立って聖書が朗読されました。イエス・キリストの活動や教えについて書かれた福音書という書物の一節です。この聖書の言葉について、振り返ってみましょう。
 イエスには、活動を共にする12人の弟子がいました。イエスはその弟子たちを呼び寄せて、「偉くなりたい者は、皆に仕える者になりなさい。」と言われました。
 ここでいう「偉くなりたい」とは、高い身分や地位につきたいということです。聖書によると、ある時弟子たちが、自分たちの中で誰が一番偉いかを言い争いました。自分を他の人よりも高い地位につけてほしいと思っている弟子もいたようです。名誉や権力がほしかったのかもしれません。朗読されたのは、そんな弟子たちの様子を見てイエスが語った言葉です。

 私たちの社会には、秩序を保つために、地位や立場の違い、役割の区別といったものがあります。そんな社会で、自分は偉い人になりたい、高い地位につきたいと考えるのは、別に悪いことではありません。ですが、高い地位について人を支配したり権力を振るったりするのが偉い人なのではない。
どんな立場や役割であっても人に仕える者が偉い人だと、この聖書の言葉は、教えています。
 仕えるという言葉は仕事の「仕」という字を書いて、一般には目上の人のために一生懸命に働くことをいいますが、ここでは、地位や立場に関係なく、その人にとって何が必要かをよく考えて、その人のために誠意を持って働くことをいいます。

 広島学院では、創立以来生徒たちに「人に仕える、よきリーダーになりなさい」と言ってきました。周りの人に「私のために働くように」と要求するような、人に仕えられるリーダーではありません。周りの人のために働く人に仕えるリーダーです。広島学院の生徒となった君たちも、将来必要とされるところで、人に仕えるよきリーダーとして、多くの人の幸せのために持てる能力を存分に発揮することを期待されています。
 そのようなリーダーになるために、君たちはこれからこの学校で、たくさんのことを学びます。「学ぶ」とは、ただ単にテストでいい点を取るための学力をつけることをいうのではありません。立派な大人になるために必要なあらゆることを身につけ、自分の可能性を広げようとすることが学ぶということです。授業はもちろん、クラブ活動や学校行事、そして友だちや先生と過ごすひと時も含めて、学校での生活のすべてが学びの場です。
 この学校での学びを通して、君たちにはたくさんの知識や技術を習得し、深く考える力や自分の意見を述べる力、人の意見をきちんと聞く力を養ってもらいたい。さらに、人を思い遣る優しい心、少々のことではくじけない強い心、真実を正しく見る広い心を育ててもらいたい。そして、自分の判断で積極的に行動する姿勢や、他の人と協力して課題を解決する態度を身に付けてもらいたい。
 何事にも失敗を恐れず積極的に挑戦することで、さらに多くを学び、学校生活がより楽しいものになります。
 もちろん誰でも悩むことや疲れることがあります。怠けたくなることもあるでしょう。楽しいことだけでなく、悩んであれこれ考えたり、疲れを癒すために休んだり、怠けたい自分と戦うことも、君たちにとって大切な学びになります。
 君たちには、今日から広島学院の生徒として、高い志をもち、仲間と一緒になってたくさんのことを積極的に学んでもらいたいと思っています。

 最後になりましたが、保護者の皆様、ご子息のご入学おめでとうございます。今、生徒にも話しました通り、広島学院は創立以来、他者に仕えるよきリーダーの育成を教育目標にしています。
 ご子息にはこれからの6年間、持てる能力をより高め、豊かな心を育み、調和のとれた優れた人格を形成して、将来それぞれが進む道で立派に活躍するための土台を作ってもらいたいと思っています。そのために教職員一同、日々ご子息と関わってまいりますので、保護者の皆様におかれましても、私どもの教育にご理解を賜り、ご協力くださいますようよろしくお願い申し上げます。

 新入生とご家族の皆様の上に神様の豊かな祝福がありますよう祈りつつ、式辞とさせていただきます。